1. お金の回転率
回転率は、資本や設備などが、どれほどの売上や顧客数になっているかを計測するための指標です。資本回転率・客席回転率・客室回転率という言葉をよく聞くと思います。
お金についても回転率(貨幣回転率、あるいは、貨幣流通速度)を計算することができます。例えば、お金の回転率は、GDPをマネーストック(MS, 世の中で保有されるお金の量)で割ることで計算します。
これを変形すると、
この式から分かるように、同じお金の量なら、お金の回転率が大きいほど、GDPは大きくなります。お金が何回も使わる、つまり消費が増えれば、消費の増加に応じて生産が活発になり、GDPは増加することになります。
2. キームガウアーの回転率
キームガウアーは、2003年にドイツで始まった地域通貨のゲゼルマネーです。キームガウアー紙幣は、3か月毎に額面の2%相当のスタンプを購入する必要があります。このゲゼルマネーの回転率を表に示します*1。
2003 | 2007 | 2010 | 2013 | |
キームガウアーの回転率(回) | 4 | 8.16 | 4.84 | 5.41 |
ユーロの回転率(回) | 2.9 | 2.41 | 1.77 | 1.65 |
対ユーロ回転倍率 | 1.38 | 3.39 | 2.74 | 3.29 |
ユーロに比べて、約3倍の流通速度となっています。 貯蓄ができる通貨と貯蓄には向かない通貨が併存しているので、相対的にキームガウアーの回転率は高くなると思います。しかし、それでも、ユーロの3倍の回転率は驚異的な数字で、消費の活性化に寄与していると考えらます。
3. 日本円の回転率
一方、日本の回転率は、0.54です *2 。お金が回転していません。
回転率が0.5ということは、使われるお金当り1回の使用としたら、半分のお金が預金口座から動かない、タンス預金として眠っていたということになります。
実際には、お金をよく使う人と、貯蓄ばかりをしている人がいるので、個々の人を見ると回転率(お金がその人を通過した回数)には違いがあります。また、企業と家計では、企業は売上に対して少ない現預金しか保有しませんので、回転率は高いと思いますが、特に日本人は貯蓄に励む傾向が強く、0.5よりも遥かに低いお金の回転率になっていると考えられます。
4. まとめ
経済成長に有効な方法の一つが、お金の回転率を上げることです。キームガウアーの回転率からも分かるようにゲゼルマネーによって、お金の回転率を上昇させ、経済成長させることができます。
(2019/5/29)
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*1:Life For Earth, 「シリコンバレーが世界のイノベーションハブでい続けるための奇策:「ゲゼルマネーの導入」」, 2019.3.11.
*2:2018年度の名目GDPは550兆円※1、2018年度末のマネーストックM2は1012兆円※2です。この数字から計算すると、回転率は0.54となります。
※1:内閣府, 「国民経済計算(GDP統計)」, 2019.5.29現在.
※2:日本銀行, 「マネーストック速報」, 2019.5.15.