ゲゼルマネー経済学入門~ゲゼルマネーを導入して、好景気にしよう

ゲゼルマネー経済学入門

ゲゼルマネーを導入して、好景気にしよう

預金課税によるハイパーインフレ対策

 異次元緩和という金融政策の失敗により、日銀のバランスシートは巨大になり、いずれは、日銀を震源とした経済危機が日本を襲います。これは、異次元緩和の出口が見いだせるか、否かにかかっています。

 異次元緩和からの脱出に失敗すれば、円暴落を引き金としたハイパーインフレに陥いる可能性があります。

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BBCより引用


 そのとき、何をすべきか?

 先に結論を言います。預金課税を実施することです。預金課税を財源として、財政収支を保った状態で不況対策を行えば、日本は本格的なハイパーインフレへの突入を回避し、経済を立て直すことができるでしょう。

 今回は、この預金課税によるハイパーインフレ対策について述べます。

1. 預金課税によるハイパーインフレ対策

 高インフレは、市中の通貨量を増やさなければ、本格的なハイパーインフレに進むことはありません。何十倍ものインフレを進行させるためには、何十倍もの通貨が必要なのです。

 ハイパーインフレが長引いてしまった多くの国では、ハイパーインフレに伴う国内経済の疲弊に対する対策として、財政ファイナンスによって経済対策を行ったために、流通通貨量が増え、ハイパーインフレを長引かせることになりました。

 終戦直後の日本のインフレも、その例外ではありません。復興金融債の発行がハイパーインフレを長引かせた原因なのです。

 そうです、流通通貨量を増やさなければよいのです。そのためには、財政収支を±0にした上で、経済対策を行う必要があります。

 では、その財源は何か?

 日本には巨額の預金があります。この預金は、国の借金の裏返しでもありますが、この預金を財源とするのです。つまり、預金課税です。

 預金はハイパーインフレになれば、あっという間に価値が無くなっていくのです。そうであれば、価値がなくなる前に価値の劣化を食い止めるために有効に使った方が良いのです。

2. 預金課税の実施

 では、どのように実施するか?それは、次のようになります。

① 現金の引き出しに対して、高率の出金税を課す。
 事実上の預金封鎖です。週当たり、一定額は非課税で引き下ろすことができるようにしても構わないでしょう。また、キャッシュレス決済が普及すれば、そもそも現金は必要ありません。キャッシュレス決済は瞬く間に普及するでしょう。

② 預金税を課す。
 例えば、税率5%を課します。日本には、1,500兆円の預金がありますので、75兆円の税収になります。非課税枠を適用すれば、課税対象預金が1,000兆円なら50兆円程度の税収が得られます。

③ 既存部分の予算は、財政収支±0。
 現状の財政規模を前提とするなら、50兆円の税収のうち、約30兆円を予算に組み入れれば、財政収支を±0にできます。そして、残りの約20兆円が黒字となります。

④ 20兆円の黒字によって不況対策を行う。
 実際には20兆円程度では、経済停滞に伴う税収源を補うだけになるかもしれませんが、それでも、大幅な赤字拡大・大幅な緊縮財政よりはましでしょう。

 この対策は、インフレの初期段階で実施しなければなりません。なぜなら、ハイパーインフレが進行すれば、預金の価値がなくなっていくからです。そうなれば、期待した税収を得られなくなります。

 また、長期化すれば、国債も高金利のものに入れ替わり、利払い費が上昇、財政収支±0を確保することが、ますます困難になります。

 早期実施が、鍵です。そして、危機的な事態を日本人が認識し、この厳しい対策を受け入れられるかに掛かっています。

3. 最後に

 異次元緩和の失敗により、日本にはハイパーインフレが訪れる危険があります。異次元緩和の出口を見いだせるか、否かにかかっています。

 もし、出口を見出すことができなければ、日本は深刻な経済危機に陥ります。おそらく、多くの国がなったように、通貨危機に陥り、輸入物価インフレをきっかけにした高インフレやマイルドなハイパーインフレ*1になるでしょう。

 このインフレをアルゼンチンやブラジル、ロシア、そして、ジンバブエやベネズエラが陥ったような本格的なハイパーインフレに突入させないための対策を今から考えおく必要があります。

 私は、この対策として、預金課税が有効であると考えています。日本には、他の国にはない巨額の預金があるのです。この預金を使って、早い段階で物価上昇を止めれば、本格的なハイパーインフレを回避することができるのです。

 この対策は、ハイパーインフレが進行してしまえば、使えなくなる方法です。何故なら、預金の価値が実質的になくなるからです。できるだけ、早期に実施する必要があります。

 そのためには、平時のうちに預金課税を導入しておくことが必要と考えます。

(2019/6/13)

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*1:国際会計基準では3年で100%(年率で約26%)のインフレがハイパーインフレの定義です。マイルドなハイパーインフレとは、この定義程度のインフレを想定しています。