ゲゼルマネー経済学入門~ゲゼルマネーを導入して、好景気にしよう

ゲゼルマネー経済学入門

ゲゼルマネーを導入して、好景気にしよう

インフレ率・経済成長率と貨幣量の変化率との関係式(フィッシャーの交換方程式からの導出)

 今回の記事では、貨幣数量説における代表的な方程式であるフィッシャーの交換方程式から、インフレ率・経済成長率と貨幣量の変化率の関係式について導きます。

1. フィッシャーの交換方程式

 貨幣数量説で用いられるフィッシャーの交換方程式は、次式で表されます。  


\begin{eqnarray}
MV & = & PQ\\
ここで、&& \\
& M:& 貨幣量\\
& V: & 貨幣回転率\\
& P:& 物価水準\\
& Q:& 取引量\\
\end{eqnarray}

 ここで、右辺の PQ は、名目GDPと見做して、物価水準としてGDPデフレータ、取引量として実質GDPを用いて表すこともできます(ケンブリッジ方程式でマーシャルの k1/Vとした場合と同じ)。


\begin{eqnarray}
MV & = & PY \\
ここで、&& \\
& P:& \mbox{GDPデフレータ} \\
& Y:& \mbox{実質GDP} \\
\end{eqnarray}

 また、


\begin{eqnarray}
G & = & PY \\
ここで、&& \\
& G:& \mbox{名目GDP} \\
\end{eqnarray}

2. 時間微分による交換方程式

 この方程式の変数を時間の関数として、書き直します。


\begin{eqnarray}
M(t)V(t) & = & P(t)Y(t) \\
\end{eqnarray}

 上式を時間微分すると、次式となります。


\begin{eqnarray}
\frac{dM}{dt}V + M\frac{dV}{dt} & = & \frac{dP}{dt}Y + P\frac{dY}{dt}\\
\end{eqnarray}

3. 変化率による交換方程式

 各微分と貨幣増加率 m、貨幣回転率の変化率 v、インフレ率 p、実質GDP成長率 y との関係は、次の通りです。


\begin{eqnarray}
貨幣増加率 m & = & \frac{1}{M}\frac{dM}{dt} \\ 
貨幣回転率の変化率 v &  = & \frac{1}{V}\frac{dV}{dt}\\ 
インフレ率 p  & = & \frac{1}{P}\frac{dP}{dt} \\
\mbox{実質GDP成長率} y & = & \frac{1}{Y}\frac{dY}{dt} \\
\end{eqnarray}

 これらを時間微分の方程式に代入すると、


\begin{eqnarray}
mMV + vMV & = & pPY + yPY \\
\end{eqnarray} 

 従って、MV=PY から次式が得られます。


\begin{eqnarray}
m+v=p+y
\end{eqnarray} 

 また、右辺は実質GDP成長率 y とインフレ率 p の和で、名目GDP成長率 g を表しています。

4. 最後に

 フィッシャーの交換方程式を取り扱う場合、貨幣回転率は一定と仮定されることが多いですが、一定と仮定しないことで導かれる関係式は、

(貨幣増加率) + (貨幣回転率の変化率) = (インフレ率) + (実質GDP成長率)

という式で、貨幣回転率の変化率の項が残ります。

 この式は、インフレ率・経済成長率などを考える上で有効な示唆を与えてくれます。日本では、少なくとも1970年以降、貨幣回転率の低下トレンドにあり、特に近年はインフレ率・経済成長率が低いため、この貨幣量回転率の変化率を無視せずにマクロ経済を考えることが重要と思います。

(2019/7/9)

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