1. シルビオ・ゲゼルが提唱した自由貨幣
ゲゼルマネーは、ドイツの経済学者シルビオ・ゲゼル (Silvio Gesell) が、著書「自然的経済秩序」(1914年初版) の中で提唱した「自由貨幣」に端を発します。自由貨幣制度では、時間の経過とともにお金の価値が減っていく仕組みを導入します。価値が減っていくために、人はお金を溜め込まず、使っていくようになります。このため、消費が活性化され、好景気となります。
このような特性を持つお金を本ブログではゲゼルマネーと呼びますが、お金が減っていくので「減価するお金」、長期保管でお金が傷んでいくので「腐るお金」と呼ばれることもあります。
2. 世界初のゲゼルマネーは1930年代
ゲゼルマネーは、実際に地域通貨として、1930年代にオーストリアのヴェルグルという町で、「労働証明書」というスタンプ紙幣として発行されました *1。毎月1%ずつ減価していきます。減価させないためには、紙幣に設けられた升目に、町から購入したスタンプを貼る必要がありました。
町は、このスタンプ紙幣を町職員の給料の一部として支払ったり、公共事業代金として支払い、税金の支払いもできるようにしました。町の商店でも、この紙幣は受け入れられました。紙幣を受け取った町民は、スタンプを貼るのを避けるために、紙幣をできるだけ早く使うようになり、消費が活性化し、当時、不況に喘いでいた町は好景気となりました。
しかし、当局から、この紙幣は疑似貨幣と見做され、間もなく発行を禁止され、町は元の不景気に戻ってしまったそうです。
3. 現代でも発行されるゲゼルマネー
現在でも、発行されているゲゼルマネーには、ドイツのキームガウアー*2の例があります。キームガウアーも、ゲゼルの提案に触発されたスタンプ紙幣で、3か月に2%減価するようになっています。
日本の消費者にとって最も身近な減価するお金は、楽天やヤフーなどの期間限定ポイントでしょうか。使用期限が過ぎれば100%減価で無くなってしまうので、ついつい余計なお買い物をしてしまいますよね。
(2019/5/28)